大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡地方裁判所 昭和51年(わ)100号 判決

本籍

静岡県清水市有東坂六一五番地の二

住居

右同所同番地

個室付浴場業兼キヤバレー、ホテル、レストラン経営

松本弘二

大正一〇年九月二七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官渡辺繁出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一〇月および罰金一、〇五〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、静岡市駒形通二丁目一番一八号において「トルコニユージヤパン」の名称で個室付浴場(通称トルコ風呂)を経営しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、入浴料収入の一部を除外し簿外預金を設定するなどの不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、

第一、昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額が四五、五一六、八八七円であり、これに対する所得税額が二三、七一五、七〇〇円であるにもかかわらず、昭和四八年三月八日、清水市江尻東一丁目五番一号所在の所轄清水税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三〇、二三一、〇〇〇円であり、これに対する所得税額は一四、三一三、四〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて被告人の左正規の所得税額と右申告税額との差額九、四〇二、三〇〇円を免れ、

第二、昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額が五一、五九八、六六九円であり、これに対する所得税額が二六、九三一、九〇〇円であるにもかかわらず、昭和四九年三月一五日、前記所轄税務署において、同税務署長に対し、所得金額は三六、七九四、一一八円であり、これに対する所得税額は一七、四二八、九〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて被告人の右正規の所得税額と右申告税額との差額九、五〇三、〇〇〇円を免れ、

第三、昭和四九年一月一日から同年一二月三一日までの所得金額が六三、六三八、三八四円であり、これに対する所得税額が三三、八四七、六〇〇円であるにもかかわらず、昭和五〇年三月一一日、前記所轄税務署において、同税務署長に対し、所得金額は二五、六二三、二九三円であり、これに対する所得税額は一〇、〇二六、〇〇〇円である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて被告人の右正規の所得税額と右申告税額との差額二三、八二一、六〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一、大蔵事務官作成の現金、有価証券等現在高確認書三通

一、大蔵事務官作成の印鑑現在確認書二通

一、岡部勉(七通)、伊藤充男、橘明美、黒田数平、松本勝衛、佐藤静枝、安藤嘉輝、山内ひろ子、岡本和秀、小原博、小野田利弘、吉田登喜男、松本和子、天野光一、戸塚芳郎、杉山敏行、稲葉正儀、森荘および村山常雄の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、岡部勉の検察官に対する供述調書

一、岡部勉外一名、松本和子、村上悌司、小沢一優、三井伊太郎、大島勇(三通)、佐藤由美子、柴酋省、玉木薫(二通)、溝口一雄(二通)、松永安弘、丹下嘉七郎、青木富士夫、鈴木貞夫、法月璋伍(二通)および常盤秀一作成の各上申書

一、海野彦司、傍田良三および前沢紀子作成の各回答書

一、三井伊太郎外一名、大島勇外一名、大石綱男外一名(三通)、大木勲外一名(八通)、小島重孝外一名(三通)、杉浦重光外一名(六通)、高森董外一名(二通)、山崎平幸外一名(二通)、今泉博行外一名、飯島功、原田弘外一名、川井祐一外一名および細木雅道外一名(三通)作成の各証明書

一、名古屋地方貯金局長外一名作成の定額郵便貯金の預払状況調書および定額預金預払調書

一、大蔵事務官作成の調査報告書

一、清水税務署長作成の証明書七通

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書三通

一、押収してある金銭借用証書等一綴(昭和五一年押第六四号の二)、損益計算書等一綴(同号の四)、総勘定元帳四綴(同号七ないし一〇)、金銭出納帳一綴(同号の一一)、営業日報三綴(同号の一二ないし一四)、総勘定元帳(同号の一五)、金銭出納帳一綴(同号の一六)、営業日報二綴(同号の一七、一八)、総勘定元帳三綴(同号の一九ないし二一)、別口元帳二綴(同号の二二、二三)、別口貸借対照表一枚(同号の二四)、別口損益計算書、貸借対照表綴二綴(同号の二五、二六)、リスト一綴(同号の二七)、預金コピー票一枚(同号の二八)、別口仕訳伝票一綴(同号の二九)、目標関係綴一綴(同号の三〇)、分析表綴一綴(同号の三一)、元帳一綴(同号の三三)、総勘定元帳一綴(同号の三四)、総勘定元帳補助元帳二綴(同号の三五、三六)、普通預金通帳二冊(同号の三七、三八)、預金一覧表一枚(同号の三九)および証書通帳預り簿一枚(同号の四〇)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書八通

一、被告人の検察官に対する供述調書二通

一、被告人外二名作成の上申書九通

(法令の適用)

一、判示各所為につき

所得税法第二三八条(いずれも懲役刑および罰金刑を併科)

一、併合罪につき

刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条、第四八条第二項(懲役刑については、犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

一、労役場留置につき

刑法第一八条

一、懲役刑の執行猶予につき

刑法第二五条第一項

(裁判官 小美野義典)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例